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デジタルサイネージとインタラクティビティ

2008/8/24 日曜日

本日はデジタルサイネージとインタラクティビティについて考えてみたいと思います.

デジタルサイネージの特長

デジタルサイネージは,下記のリンクに説明があるように,パブリックスペースに設置された情報提示システムです.

デジタルサイネージ via Wikipedia
デジタルサイネージ(Digital Signage)とは、デジタル技術を使い、タイムリーに映像や情報をディスプレイに表示する「次世代型インフォメーションシステム」である。

デジタルサイネージの最近の例では,リクルートメディアラボが開発した広告に連動したにおいを提示するシステムがあります.

八重洲に巨大電子看板が出現 動画と香りで道行く人を顧客に via ITmedia
東京駅の八重洲地下街の一角に巨大な電子看板が設置された。飲食店の動画を映し出すディスプレイに近づくとさわやかな香りが漂う。リクルートが実施しているデジタルサイネージの実証実験の一幕だ。

このようなデジタルサイネージの最大の特徴は,
1. 特定の場所の
2. 特定の個人/グループに向けられた
3. インタラクティビティを持った情報提示
と抽象化できるでしょう.

2については,ユビキタスコンピューティングとは不可分の関係にある個人情報とセキュリティの問題がつきまといます.公共に設置された装置に対して,気軽に個人情報を渡すユーザは珍しいでしょう.したがって,デジタルサイネージでは,任意の情報のダウンロードかその場での体験に終始することとなります.先ほどのにおいのシステムはまさに
その場限りの広告効果を提示したシステムといえるでしょう.現時点では,実験ということもあり,広告効果がメディアによって生み出されている点は否定できず.今後,システムとしてどのように汎用性を組み込み,サービスとして安定させることができるか注目したいところです.

3について語る前に,インタラクティビティにおける楽しさはどこで生まれるか,という根源的な問題について述べたいと思います.まず,ここでは,楽しさの概念としてチクセントミハイのフローを利用します.チクセントミハイは,数十年に渡って数千人に対してのロングインタビュー,アンケート,対話をもとに,ヒトが楽しさを覚える状態について研究を行いました.チクセントミハイは,これらの結果をもとに,フローを以下のように定義し,フロー構成要素を8項目に体系化しました.この8項目にしたがって質問項目を作成し,楽しさについて評価を行う方法がフロー評価手法です.

フロー via Wikipedia
フロー(英語:Flow )とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。

フロー評価手法を用いれば,インタラクティブシステムにおいてユーザが楽しさを得ているか否かが客観的に判断可能です.従来の研究では,どのようなメカニズムが楽しさを生成しているのかが不明でした.このメカニズムに注目したのが管理人の博士論文なのですが,それは別稿で述べるとして,ひとつのキーポイントにフィードバックメカニズムという視点があります.

ヒトという有機体はシステムと同様,入力器官と出力器官を持ち,刺激に対して,何らかの出力を返します.出力は心的状態でもあるし,身体の動きかもしれない.重要な点は,このようなフィードバックシステムであるヒトは,不確実性を備えたインタラクティブシステムを経験する際,あるメカニズムを通じて,楽しさの状態へと自己修正をして自発的に到達するケースが見られるという点です.ここでいう不確実性をもったインタラクティビティとは,決定的な(スイッチとしての)インタラクションではなく,計算不可能性をもったインラクションと言えます.では,このような仕組みを持ったデジタルサイネージシステムについて考えてみましょう.

インタラクティビティに注目したデジタルサイネージシステム

まず,においを生成すればインタラクティビティを保持しているという視点は,正確にいうならば,単なるスイッチに過ぎず,不確実性を持ったインタラクティビティには程遠いと言えます.つまり,予想の範囲内の結果しか返しません.カレーショップならば当然カレーのにおいが合成され提示されるという予想です.

これに対し,フィードバックシステムを採用し没入感を得させるデジタルサイネージの例を挙げましょう.例えば,某炭酸飲料のシズル感を表現するデジタルサイネージとして,ヒトの動きに合わせて泡が生成/拡散するシステムはどうでしょうか?あるいは,炭酸であるならばビールでも良いかもしれない.別のシズル感をかもし出す要素としてハンバーガーはどうでしょうか?ハンバーガーそのものの湯気や肉が焼ける音を,ヒトの動きに合わせて生成するシステムでる.ユーザは実際にしばらくの間これらを体験してみてはじめてシステムからの結果を理解できるでしょう.

これらのデジタルサイネージの例は目的が喪失している,という点でユーザをフローに至らせる全ての構成要素を満たしているわけではありません.したがって,フローに至る可能性は低いでしょう.しかしながら,フィードバックシステムの中で不確実性をもったインタラクティビティを体感する過程で没入感を得られるでしょう.

情報を取得する,という視点の(プル型の)インタラクティビティに基づいたデジタルサイネージは,単なるダウンロード数に過ぎない意味で,効果測定という観点に限り,(クライアントに対する)わかりやすさという点で利点を持ちます.しかし,データよりも体験としての楽しさや没入感を提示することで,広告としての効果を提示するアプローチこそ,他との差別化をはかり,記憶に定着させるという意味で有効であると考えなければならないでしょう.

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